お世話になっているある人からのアドバイスで、 ジェームズヤングの「アイデアを生むための5つのステップ」というのを紹介されました。その5つのステップとは以下のものです。
(1)情報を収集する
(2)集めた情報を頭の中で咀嚼する(考え抜く)
(3)いったん問題を放棄する(一度離れてみる)
(4)ふとしたきっかけでアイデアが生まれる
(5)生まれたアイデアを大切に育てる
考える習慣を作る事が重要と、ビジネス上のアドバイスとして紹介してもらったものでしたが、私も多摩美の学生時代に大学の先生(著名なグラフィックデザイナー)から紹介され、デザイン上のアイディアを豊かにするために、この本を読んだのを思い出しました。
あの頃は、どんな斬新なアイディアを出して、インパクトのある作品を作るかということに必死になって、貧弱なアイディアであることにもがいていました。
デッサン力もそこそこあって、バランス感覚も持ち合わせていたその当時の私は、優等生的な作品を作り成績もそれなりに良かったのですが、人をあっと言わせるような強烈なインパクトのあるものを作る事はできませんでした。グラフィックデザインは斬新さが勝負というひとつの価値基準がある中、その答えを見つけるヒントとして、この本を読んだのを覚えています。
今となっては、美しく見せるバランス感覚が自分の武器である事が分かってきましたが、学生時代は5つのステップの1番と2番目の項目、つまりたくさん情報を収集し(たくさんのアートやデザインを見て、たくさんの本を読む)、そして自分なりの思考で考え抜く(世界観を広げる)、そんな時代を美大時代は過ごしていたと思っています。
そして3番の「いったん問題を放棄する」は、私の人生の場合は出産と育児でアートとデザインから少しだけ距離をおいたことがそれに相当するのかもしれません。そして今、過去に培ってきた事が、自然とアイディアとなって自分のデザインに盛り込まれていると感じています。
それらは、長期的にみた私のステップですが、もっと短期的なスパンでのアイディアを生むケースで捉えてみても、これらのステップは重要なものだと思います。はやりこの理論で一番印象に残っているのは、3番の「一度放棄する事」ということでした。
考え抜いて考え抜いて、そして忘れる。
ここで潜在意識に吸収されて、そして必要な時にふと思い浮かぶといったことがあるように思います。考えを放棄するというのは無責任のようですが、ここのステップは、1、2のステップで情報収集した外部からの情報と考え抜いた思考を、自分の中で醸造させる重要な時期と思います。この醸造されたものが、いずれ自分の言葉、自分の表現となって表出するのでしょう。
もうひとつ浪人時代に読んだ本、池田満寿夫の「模倣と想像」も私に大きな影響を与えた本ですが、まさにこれに重なるものがあると思います。自己表現としているものも、それを形成しているのは過去にその人が見た外部からの情報に影響されているはずです。何も無いところから天才的なアイディアが生まれるわけではない。
言葉を変えると表現は模倣からはじまっていているわけですが、それを別の人物がその人の頭の中で消化された時にその人の表現となるわけです。
posted by Sachiyo Inami at 00:00|
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デザインの話
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