そして私が行うアート活動は、インスタレーションという空間作品として表現することがほとんどです。
私が建築や、空間表現に魅せられる理由は、「3次元の強さ」=「身体を通した体験」にあります。
webサイトやグラフィックのデザインなど2次元のデザインを行う毎日ですが、3次元の強さにはかなわないと思っています。デザインやアートが、人に何かを伝えるものであるとして、人のこころにメッセージを送る手段として、鑑賞者が自分の体を使って空間を体験する事は、その情報量の大きさは2次元とは比べものにならない程大きく、その情報は体と記憶に強く刻まれます。
その空間=空気を体験するということは、静止画を目だけで見るのでなく自分が歩き移動する事により、自分の身体でその空間を体験するということです。部屋を移動するシーンを映した動画は、身体ではなく、目だけで得た体験にすぎません。さらに、空気を肌で感じ、周囲の香り、音も加わって、総合的にその空間を感じる事ができます。五感を通して感じられる事の強さは、ものを表現する伝える手法として常に意識していますが、さらに鑑賞者として、多くの空間(自然、人工的なものを問わず)に大きな感動を与えられてきました。
オーストラリアの大地に身を置いた時、熊野の森の空気を肌で感じる時、あるいは小川のせせらぎに佇んで耳を傾けている時、私の心と身体は、それらの空間と共鳴しているのを感じます。
同様に人工的なものであっても、有名無名を問わず建築家の設計した建築からも同じような感覚を得る事が多くあります。直島にある安藤忠雄設計ベネッセハウスのOVAL客室の大きなガラス窓から見られる瀬戸内海の景色は素晴らしく、地中美術館スロープ回廊のスリットからみる中庭の風景は絶妙で、人がスロープを移動する事で人の目に映るビジュアルがどのように変化するかまでを計算し尽くしているところに、安藤忠雄のすごさを感じます。